事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所とは

 

宅地建物取引業法では、法第3条第1項の「事務所」には専任の宅地建物取引士を一定割合以上設置することを義務付けています。

しかし、法第3条第1項の「事務所」に該当しない案内所・展示会等であっても、契約締結等を行なう場合には、宅地建物取引業の業務の適正を確保すべき必要性が非常に高いといえます。
そこで宅地建物取引業法では、こうした案内所等が一定の要件に該当する場合には、1名以上の成年の専任の宅地建物取引士を常時設置するように義務付けているのである。

このような「事務所以外の場所であって、専任の宅地建物取引士を置くべき場所」とは、具体的には、施行規則第15条の5の2で規定されている。ただし、この施行規則第15条の5の2の内容は複雑なので、1.外形的な要件と2.実質的な要件に分けてそれぞれ説明する(なお、以下の文章は国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方にもとづいている)。

 

1.外形的な要件

施行規則第15条の5の2で規定する「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」とは、次の4種類の場所のどれかに該当することが必要である。
1)事務所以外で継続的に業務を行なう施設を有する場所(管理事務所と称する業者もいる)
2)10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物を分譲する場合の案内所
3)他の宅地建物取引業者が分譲する10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物について、代理または媒介をする場合の案内所
4)宅地建物取引業者が展示会その他の催しをする場所

上記の1)は、「事務所」と同等程度に事務所としての物的施設を有してはいるが、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する者(支店長・支配人など)が設置されていないせいで、「事務所」から除外されるような場所を指している。
具体的には、「特定の物件の契約または申込みの受付等を行なう場所」「特定のプロジェクトを実施するための現地の出張所」等が該当する。

2)は、一団地(すなわち10区画以上の一団の宅地または10区画以上の一団の建物)の分譲をするための案内所のことである。これには臨時に開設する案内所も含まれる。例えば、「週末に宅地建物取引士や契約締結権者が出張して申込みの受付や契約の締結を行なう別荘の現地案内所等のように、週末にのみ営業を行なうような場所」も含まれる。

3)は、上記2)の分譲について、販売の代理や媒介を行なう宅地建物取引業者が設置する案内所を指している。

4)は、「宅地建物の取引や媒介契約の申込みを行なう不動産フェア」「宅地建物の買換え・住替えの相談会」「住宅金融公庫融資付物件等のように一時に多数の顧客が対象となる場合に設けられる抽選会」「売買契約の事務処理等を行なう場所」などのように、催しとして期間を限って開催されるフェア・展示会・相談会・抽選会その他を指している。

2.実質的な要件
上述の1.の1)から4)の場所において、契約を締結しまたは契約の申込みを受けるとき、その場所は「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」となる。

ここで、「契約の締結」「契約の申込みを受ける」という言葉の具体的な意味が「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で詳しく規定されているので以下で紹介します。

1)契約の締結
契約とは、「宅地建物の売買・交換の契約(予約を含む)」「宅地建物の売買・交換・貸借の代理・媒介の契約(予約を含む)」を指している。従って、物件の売買契約だけでなく、物件の売買の媒介契約や、物件の賃貸の媒介契約なども含まれている。
このような意味での契約を締結するためには、「契約を締結する権限を有する者が派遣されている」か、または「契約を締結する権限の委任を受けた者が置かれている」ことが必要となる。

2)契約の申込みを受ける
契約の意味は上記1)と同じである。
また「申込み」とは、契約を締結する意思を表示することであるが、手付金・申込証拠金などの金銭を交付して締結の意思表示をする場合だけではなくて、「物件の購入のための抽選の申し込み」のような金銭の授受を伴わない意思表示も含まれるので、注意したい。
なお「申込みを受ける」ためには、「契約を締結する権限を有する者が派遣されていること」または「契約を締結する権限の委任を受けた者が置かれていること」は必須ではない。この点にも注意したい。

 

 

標識の掲示とは ー横行する業法違反業者ー

標識の掲示とは

「管理事務所」などと名乗り、実質は宅地建物取引業を営んでいる業者がいますので、事務所に行った際には掲示がご確認ください。

表示がない場所での営業行為は宅建業法違反となります。

 

免許証番号などを記載した「標識」を、宅地建物取引業者の事務所その他の一定の場所に掲示することを「標識の掲示」という。

1.趣旨
無免許営業を防止すること、責任の所在を明確にすること等の目的で、宅地建物取引業者に義務付けられたものである(宅建業法第50条第1項)。

2.標識に記載すべき事項
標識に掲示すべき事項は、免許証番号、免許有効期間、商号、代表者氏名、主たる事務所の所在地など(施行規則第19条第2項)。

3.標識を掲示すべき場所
標識を掲示すべき場所としては、次の1)から3)の3種類の場所が法定されている。
1)事務所(法第3条第1項)※
2)事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所(施行規則第15条の5の2)※
3)1)および2)以外の場所であって標識を掲示すべき場所(法第50条第1項、施行規則第19条第1項)

4.標識を掲示すべき場所についての説明
上記の1)と2)については、別項目の「事務所」「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」に詳しい説明があるのでそちらを参照のこと。
上記の3)の場所は、施行規則第19条第1項において法定されている。具体的には上記の3)の場所とは、次のa)からe)の場所のことである。
a)継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
b)宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地または建物の所在する場所(ここで「一団」とは「10戸以上または10区画以上」を指す。次のc)とd)でも同じ(施行規則第15条の5の2による))
c)一団地の宅地建物の分譲を案内所を設置して行なう場合には、その案内所
d)他の宅地建物取引業者が行なう一団の宅地建物の分譲の代理または媒介を案内所を設置して行なう場合には、その案内所
e)宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合には、これらの催しを実施する場所

5.標識を掲示すべき場所についての説明の補足
上述の3.の2)の場所と3)の場所は、要件が非常によく似ているので区別がつきにくい。
区別するための判断基準は、2)の場所では、契約の締結または契約の申込みを受けるという業務を行なうことが要件になっているのに対して、3)の場所ではそうした契約に関する要件がないという点である。

例えば、ある10区画の宅地の分譲の案内所について、その案内所で契約の締結を行なうかまたは契約の申込みを受けるのであれば、その案内所は2)の場所となり、専任の宅地建物取引士を1名以上設置するとともに、標識を掲示しなければならない。
しかし、その案内所において、契約の締結を行なうことも契約の申込みを受けることもしないのであれば、その案内所は3)の場所となるので、専任の宅地建物取引士を設置する義務はないが、標識は必ず掲示しなければならない、ということである。

また上述の4.の場所のうちb)の場所(すなわち一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地または建物の所在する場所)については、専任の宅地建物取引士を設置する場所になることはあり得ないが、標識は必ず掲示しなければならないことに注意したい。

 

第三条 宅地建物取引業を営もうとする者は、2以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。

第十五条の五の二  法第三十一条の三第一項 の国土交通省令で定める場所は、次に掲げるもので、宅地若しくは建物の売買若しくは交換の契約(予約を含む。以下この項において同じ。)若しくは宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるものとする。

 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
 宅地建物取引業者が十区画以上の一団の宅地又は十戸以上の一団の建物の分譲(以下この条、第十六条の五及び第十九条第一項において「一団の宅地建物の分譲」という。)を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
 他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
 宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所

第十九条 法第五十条第一項 の国土交通省令で定める業務を行う場所は、次に掲げるもので第十五条の五の二に規定する場所以外のものとする。

 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
 宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所
 前号の分譲を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
 他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
 宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所